スポーツ活動の中で繰り返し行われる動作であり、受傷機転として発生頻度が比較的高く重症度の高いケガになりがちな着地。
なぜ着地時にケガをするのでしょうか?またどうすればケガをしなくて済むのでしょうか?
先日、日本超音波骨軟組織学会の学術総会に出席し、そこで聞いた芦屋中央病院整形外科の迫田真輔先生の『なぜ怪我をするのか?-スポーツ動作を診る-』と言うご講演とその評価法がすごく良かったので少し紹介したいと思います。
まずケガはどうして起こるのでしょうか?
身体がかたいから、筋力が弱いから、バランスが悪いから、関節が緩いから、疲労。
よく耳にする理由であり、選手への指導内容としてもよく使います。
しかしこれって理由になっているのでしょうか?
臨床上、ハムストリングスが硬いためケガをした人がいたとしても、ハムストリングスがかたい人全員がケガをしているわけではありません。
では何が違うのか?
講演では身体がかたい、筋力が弱いなどと言うのはリスク因子であり、そこに何らかの受傷機転があってはじめてケガをする。
そしてその受傷機転とは「問題のあるスポーツ動作」であると言われていました。
なぜケガをするのかの答えは、スポーツ動作に問題があるからであり
改善にはリスク因子(正しいスポーツ動作の遂行を妨げるもの)を取り除き正しいスポーツ動作を行う必要があると言う事です。
そのことからスポーツ動作を診る事に注目され、「正しいスポーツ動作」について研究をされたそうです。
先生の研究によるとジャンプの着地、切り返し、踏み込み、ステップなどの動作は
足部接地により動きのベクトルが急激に変化する(次の動作に移る)瞬間である為、その瞬間にケガが発生しやすいと言う事がわかりました。
そこでどういう着地が悪く、負傷しない為にはどうすればよいのか、スポーツ動作において効率的なポジションとは何かを研究され、動作をスコア化して「正しい着地姿勢」を評価する方法を作られたそうです。
講演内容を基にちょっと描いてみました。
‐芦屋式スポーツ動作評価法‐着地スコア
これを聞いて、帰ってyoutubeでバスケなどの選手が負傷した瞬間やサッカー選手のスーパープレーなどを見てみると、
負傷した選手のプレーはその瞬間重心が離れていたり、ニーインしていたりしており、
スーパープレーの選手が何人も相手を抜く時の身体の使い方は
切り返しのたびに足部接地側に上半身を寄せゼロポジションとるようにしていたり。
着地スコアを基準に動作の良し悪しを決定することが出来ました。
因みにゼロポジションは始まりの姿勢であり足部接地から次の動作に効率的に移るための姿勢である為そういう名前を付けたそうです。
この研究で面白いなと思ったのは様々な一流選手の動作(過度な負荷にも耐え、高いレベルのパフォーマンスが行える動作)の共通点と負傷原因となる動作を比較し協調運動として正しい姿勢と言うのを見出した評価法である為、
リスク因子を取り除いたケガをしない為の姿勢であると共に競技パフォーマンスを向上させる為の姿勢でもあるという事ではないかと思います。
また、スポーツ動作、身体機能の評価は選手本人及び指導者にも理解できる簡単なものでなければならない。
と言うコンセプトの下、複雑なスポーツ動作をなるべく簡潔にだれでも行えるレベルにまとめられたのは非常に画期的でありがたいなと思いました。
今後の施術方針の参考にさせていただきたいと思います。